「夏を旨とすべし」再考。
すっかり涼しくなり、もはや寒いと言ってもいい程になってから、この2冊の本を読んでみました。
「エコハウスのウソ」と「エアコンのいらない家」というキャッチーなタイトルの2冊です。
「エコハウスのウソ」という本の帯には<「エアコン嫌い」もほどほどに。>と書いてあります。
どちらも省エネや節電というベクトルに向いているかと思いきや、片や「エアコン使え」片や「エアコンいらない」と相反する内容が書いてあります。
これは双方を読んでみないと・・・と思い、2冊共読むことになりました。
※以下のコメントは、個人的な見解によるものであることをご理解ください。
どちらも共通して書いてある事として、非常に興味深い点がありました。
それは、私達のように建築を学んできた者が必ず習う、日本の住宅を設計する際は、吉田兼好の徒然草に記してある「家の作りやうは、夏を旨とすべし。」という事を重要視して、夏の季候を基として設計を行うという点を全否定とまでは言いませんが、否定しているという点です。
この「夏を旨とすべし。」を基にして設計するという事は、教科書的な書き方をすると、軒が深く、風通しの良い家を作りましょう。という事になると思います。
ただ、徒然草はかれこれ700年以上前に書かれており、700年前の夏と現代の夏が果たして一緒であろうか?季候も違えば環境も違う・・・もうちょっと柔軟に対応しましょう的な考え方をどちらの本にも書いてあります。
現代の東京は、夏は亜熱帯と似た季候であり、冬はパリに匹敵するほど寒さになります。
そんな訳で、「冬も旨とすべし。」となるのであります。
ここ数年の省エネ基準の変化により、断熱基準が以前よりかなり厳しくなっており、冬は暖房で一度暖めれば、その後は比較的快適な空間を求めることは可能になったように思います。
ただ、夏は年々過酷になっているようで、そんな条件の中、如何に快適に過ごすかを考えなければいけません。
日射しを制御することは物理的に可能なのです。
風通しの良い設計(プラン)を造る事も可能です。しかし、肝心の風が吹くかどうかは、立地条件によりマチマチ・・・
ここで2冊の大きな分岐点がありました。
「エアコン嫌いもほどほどに・・・」では、部屋を小さく区切れるようにし、局所的にエアコンが効く部屋を確保できるようにしておく。
「エアコンのいらない家」では、何とか風を採り入れるように工夫する。
的な感じでした。
他にも、細かい理由はキチンと書いてあるのですが、僕としては前者の「エアコン嫌いもほどほどに・・・」に書いてある事の方が、すんなり受け容れる事ができました。
(節電に関して、目の敵にされているようなエアコンですが、実は全体のデータを見るとそうでもないとか、熱中症にかかる方の内、室内で熱中症にかかる割合の多さとか・・・色々な根拠は「へぇ。」という感想が多いです。)
節電や節約など、何事も程々に出来るような家をつくる使命が、自分にはあるのだと再確認をしました。